『カラマーゾフの兄弟』第11編
告げたと、イヴァンに話した。『わたしがね、サモワールをかたづけにあの人の部屋へ入ると、あの人は壁の釘にぶら下ってるじゃありませんか』とマリヤは言った。『警察へ知らせましたか?』というアリョーシャの問いに対して、彼女は、まだ誰にも知らせない…
「馬鹿!」とイヴァンはふたたび繰り返した。 「君はしじゅう同じことばかり言ってるが、僕は去年ひどいレウマチスにかかってね、いまだに思い出すよ。」 「悪魔でもレウマチスになるかな?」 「僕はときどき人間の姿になるんだもの。レウマチスぐらいにはか…
あとで私をいじめたりなさることもできません。なぜって、そうなりゃ、私は法廷で何もかも言ってしまいますからね。しかし、何も私が盗んだり、殺したりした、なんて言うんじゃありませんよ……そんなことは言やしません……あなたから、盗んで殺せとそそのかさ…
た私なぞは、まず警察へ突き出してしまうか……少くとも、その場で横面を張り飛ばすか、しなけりゃならんはずじゃありませんか。ところが、まあ、どうでございましょう、あなたは少しも怒るどころじゃない、その反対に、すぐ私のつまらない言葉をそのまま喜ん…
ことや、出発の前夜、彼と交した最後の対話などを、絶えず思いつづけた。さまざまなことが彼の心を惑乱した。さまざまなことが、うさんくさく思われた。しかし、予審判事に申し立てをする時には、しばらくその対話のことは言わずにおいて、スメルジャコフと…
「そうでしょうとも」と彼女は妙に毒々しい調子で断ち切るように言い、急に顔を赤くした。 「あなたはまだわたしというものをご存じないんですよ、アレクセイさん」と彼女は威嚇するように言った。「だけど、わたしもまだ自分で自分を知らないんですの。たぶ…
「いや、カルルじゃない、ちょっと待ってくれ、おれはでたらめを言っちゃった、クロード・ベルナール(十九世紀フランスの生理学者)だ。クロード・ベルナールって一たい何だい? 化学者のことかい?」 「それは確か、ある学者です」とアリョーシャは答えた…
てふいに出かけて殺してしまったんですもの。殺したくはない、殺したくはないと言ってながら、だしぬけに殺したんですよ。つまりこういうふうに、殺すまいと思っていながら、つい殺してしまったという点で、あの人は赦されるんですわね。」 「でも、兄さんは…
affect→ affect (※前後を半角開ける、一番目立つところに書いておく)にわかるものですか! リーザがあなたとの約束を破ってからというものはね、アレクセイさん、あなたのとこへお嫁に行くという、あの子供らしい約束を破ってからというものは、何もかもみ…
え? じゃ、あれに三ルーブリもたせて、肉入りパイを十ばかり紙に包んで届けさせておくれ。だからね、アリョーシャ、わたしが紳士《パン》たちに肉入りパイを持たせてやったって、あんたぜひミーチャに話してちょうだい。」 「どんなことがあったって話しゃ…
第十一篇 兄イヴァン 第一 グルーシェンカの家で アリョーシャは中央広場のほうへ赴いた。彼は、商人の妻モローソヴァの家に住んでいるグルーシェンカのもとへと志したのである。彼女は朝早く、彼のところヘフェーニャをよこして、ぜひ来てもらいたいとくれ…