『カラマーゾフの兄弟』第6篇
か、人間の同胞的団結とかいう思想が、だんだん世の中に湮滅していって、今ではほとんど冷笑をもって迎えられるようにさえなった。実際、みずから案出した無数の欲望を満足させることにのみ馴れた囚われたる人間が、どうして自分の習慣から離れることができ…
こんなこともつけたした。『わたくしはこのことばかり考えているのです。』余の顔を見て微笑し、『わたくしはそれをあなた以上に確信するものです。なぜかってことは、あとでおわかりになりますよ。』 これを聞いて余は心の中で思った。『この人はきっと何か…
講義するわけにゆかぬ。よしルーテル派やその他の異教徒が、羊の群を奪い始めようとも、勝手に奪わせるほかはない。自分らの収入が少いのだから、などと断言して憚らないものさえある。ああ、神よ、彼らのためにかほどまで貴き収入を、いま少し多分に与えた…
県内でも一ばん丁寧な注意ぶかい医者てかなり年輩の上品な老人であった)、これはなかなか激烈な発作だから、『心配な結果にならないともかぎらぬ』、しかし、今のところ、まだはっきりしたことはわからないが、もし今日の薬がきかなかったら、明日また別な…