『悪霊』第3編
全体として、彼はしじゅう勝ち誇ったような状態になっていた。彼女は山上の垂訓を通読した。 「Assez, assez, mon enfant(たくさんだ、たくさんだ、わが子よ)たくさんです……いったいあなたはこれだけ[#「これだけ」に傍点]でも不十分だと思うんですか?…
一任するから。ひとつ朝からみんなのところを廻ってくれたまえ。ぼくの訓令は明日か明後日、みんなに聞き分けるだけの落ちつきができた頃、どこかに集めて読んで聞かしたらいいよ……しかし、ぼくが請け合っておくがね、あの連中は明日にもそれだけの落ちつき…
いては、きみはぜんぜん安心して可なりです、――密告などしやしません」 彼はくるりとくびすを転じて、すたすた歩き出した。 「畜生、あいつ途中であの連中に会って、シャートフに告げ口をするに相違ない!」とピョートルは叫んで、いきなりピストルをつかみ…
びえたように男の顔を見つめながら、奇妙な調子でこうたずねた。 「といって、つまり、なんのことだね、マリイ?」シャートフは合点がゆかなかった。「お前なにをきいてるんだい? ああ、どうしよう、ぼくはまるでとほうにくれてしまった。マリイ、堪忍して…
の思いに沈めるのであった。リプーチンはとうとう彼が憎くてたまらなくなって、どうしてもその顔から目が放せないほどだった。それは一種の神経的発作ともいうべきものであった。彼は相手の口ヘほうり込むビフテキのきれを、一つ一つ数えながら、その口がぱ…
しまいますよ。あなたはまだ女の心を知らないんですね! それにあのひとは、あなたと結婚するのが一番とくなんです。だって、あのひとはなんといってもやはり自分の顔に泥を塗ってしまったんですからね。そのうえ、ぼくはあのひとに『小舟』式の話を、うんと…
へ投げかけた。その露骨な刺すような光は、これらの人々のびくびくした様子にあまりにも不調和な感じを与えるのであった。 「その様子がわたしの胸へぐっと来ましたの。そのとき初めて、わたしもレムブケーのことを感づくようになりました」とユリヤ夫人は後…
ら響いて来た。 「読んでください、読んでください」と、幾たりかのうちょうてんになった婦人連の声が、それに相槌を打った。ついに拍手の音も起こったが、しかし、あっさりした勢いのないものだった。 カルマジーノフはひん曲ったような微笑を浮かべて、椅…
[#1字下げ]第三編[#「第三編」は大見出し] [#3字下げ]第1章 祭――第一部[#「第1章 祭――第一部」は中見出し] [#6字下げ]1[#「1」は小見出し] 祭はシュピグーリン騒ぎの日の、さまざまな奇怪な出来事にも妨げられず、いよいよ開催され…