京都アニメーション放火殺人事件(京都市伏見区放火殺人事件、2019年07月18日)の資料収集の会

(元・オウム真理教事件・資料収集および独立検証の会、できるかぎり同時進行)

「破防法弁明手続き 松本智津夫教団代表の意見陳述(その二)」(『オウム法廷』2上巻)

※半分だけ収録する。
破防法弁明手続きの全体は、底本および、こちらから読むことができる。

オウム破防法適用で民主主義が危ない!

 受命職員 ただいまより、オウム真理教に対する第四回弁明期日を始めます。
 前回に引き続き、松本智津夫代表の弁明を聞きますが、関連のないことは陳述しないように。本日中に終了する予定だから、明瞭、簡潔に、第三者に分かるようにお願いします。
 代理人 私たちは本日で終わりにする約束はしていない。若干の打ち合わせをしたい。
(この後、約四分間、中断)
 代理人 本来、今日は一日、確保されるべきだった。それが無理やり半日にされた。有効に使いたいので、受命職員は妨害しないで下さい。
 まず、あなたが警視庁の中で書いたノートについて。破防法について、どんな記述があるか。
 松本 当時、警察官、検察官から破防法についての動きがあると聞き、私が死んでも適用をやめていただきたいということ、また教団はもともと破壊活動などしないし、私自身が指示、命令することはない。また、私自身が代表を降りてもいい、という内容です。
(略)

(十五分間休憩)
 代理人 オウム真理教におけるあなたの立場を変更することについて、決意が本当に間違いないか、もう一度確認したい。
 松本 間違いありません。
 代理人 将来撤回する、あれは破防法適用を免れるための便法だった、ということはありませんね。
 松本 はい、ありません。
 代理人 本論に戻ります。九四年二月二十二日から二十五日にかけて、中国に旅行しましたか。
 松本 はい。
 代理人 教団の約八十人による団体旅行でしたね。
 松本 はい。
 代理人 公安調査庁は証拠で、その時、あなたが九七年に日本を支配する夢を見た、として日本の王になることを高らかに宣言した、そのためには何をしてもいいと言った、と。極めて危険な政治的な目的を持っている、としている。
 あなたは中国で、中川(智正被告)ら二、三十人を集め、こう発言したとなっている。覚えているか。
 松本 いいえ。しかし、内容としては理解できる。
 代理人 王というのは宗教的意味合い、宗教的意義があるのか。
 松本 九二年十一月の決意の中に、弟子に対しても王になりなさいと言っているので、読めばどのような意味で使っているか、ご理解していただけると思う。
 代理人 九二年十一月の特別決意を読みますと、「王になる。聖者になる。王として君臨するぞ。聖者として君臨するぞ……」と。これはほんの一部ですが、こういう決意は日常的に信者さんも唱えているのですか。
 松本 はい。
 代理人 信者さんも唱えるというのはどういう意味ですか。
 松本 信者一人一人がみんなから尊敬されるようにと。周りの人たちを引き上げる。魂を昇華させる。聖者と同意語として使っていた。中国でも初期のころはそうだったはずです。
 代理人 公安調査庁によると九七年に、時代を画して、武力によって日本を支配するという。
 松本 まったくございません。
 代理人 教団には、在家とか出家がある。出家制度の中で、お布施について、親のものまでもっていくことに対して、社会的批判があること自体、あなたは知っていたか。
 松本 私は先生方に言われて初めて知った。
 代理人 あなたの財産について聞きたい。
 松本 私有財産は有していない。一文無しということは、どんな調査をしても明らかです。本当に解脱を求めるなら、お布施に妥協を与えることは許されない。ただし、親の財産を取っていいということとは別問題です。
 代理人 あなた自身のお布施について聞きたい。
 松本 たとえば家、私は株式会社オウムの代表として、たしか給料を月に三十五万円と記憶していますが、すべて教団にお布施している。個人の金としては、有していない。
 お布施というものは、その人ができることをすると、指導していました。
 代理人 ヘリコプターの話です。教団で、MI-17というのを購入したことがあるようですね。記録によると、九四年六月ごろで、その年の秋ごろに朝霧(富士山麓朝霧高原)のほうに持ってきた。公安調査庁は、「サリンを上空から撒くため」と主張している。目的は。
 松本 二つあって、説法会その他をスピーディーにするため。その他、コンピューターの製造・販売をしていたが、主に台湾から部品を入れていた。競争が激しくて。空輸で、その時間短縮をしたい、と。
 代理人 早川(紀代秀被告)が購入の窓口か。
 松本 早川が交渉した。
 代理人 公安調査庁は軍用ヘリだと主張しているが、民間用、民生用ということか。
 松本 これは民用です。早川がそう言っていたし、民用であることは間違いありません。
 代理人 結果的には飛ばない。今はローターを外して、大きな鉄くず状態。飛行許可が出なかった理由を知っているか。
 松本 運輸省と当時交渉していた。早川が窓口だった。飛ばすためには、何億もかかるといっていた。そんなにかかるなら、飛ばしてもしようがないと早川に言ったおぼえがある。
 代理人 何にそんなにかかるのか。
 松本 点検にかかると聞いた。
 代理人 第一回弁明手続きの中で、獄中にあっても、あなたがなお教団運営について指示をしているという証拠として、信徒の弁護人だった弁護士を通じて録音テープが流れたり、信徒のステージ昇格を指示したりとか、いろいろ指示したといわれている。そのうち九五年七月二十日付のものについて、公安調査庁は、獄中から弁護士養成を指示したものだとしているが。
 松本 この当時ですね、警察、検察の方に、刑事弁護人だった弁護士は六十七歳か六十八歳で、裁判が長くなると、この弁護士ではもたないだろう、お前どうするんだ、と質問された。その話を(弁護人の)先生に話しましたところ、それは私の方で何とか考える、ということでした。次に面会した時だったと思うが、教団には優秀な人がいるから、私(弁護人)が鍛えるよ、という話がありました。だから、私は指示してはいません。この件について、破防法の逆の証拠ではないかと思います。長期裁判を考えているということで、破壊活動というのではなく、刑事司法にのっとっていこうという姿勢の根拠になると思う。
 代理人 あなた自身が募集の具体的な指示をしたことはないのですね。
 松本 ありません。先生の方で教団の方と話し合ったのだと思う。
 代理人 第一回の弁明手続きにあなたを出すか出さないかについて、新聞報道によると、警察と法務省で対立があったというが、何か言われたことは。
 松本 私を担当した警部補は「もともと公安調査庁は廃止されるべきもので、何の力もない。警視庁が一言いえば、すぐ引っ込む」と言っていた。「破防法なんて絶対適用できるわけないのに、生き残りに必死なんだろう」とも。
 代理人 教団の危険性について、何か言われたことは。
 松本 もともと、このような証拠でよく破防法が適用できるな、とあきれていた。
 代理人 サリンなど危険物を教団が所持していないかについて、何か言っていたか。
 松本 検察、警察の両方が、教団にはサリンはないと言っていた。
 代理人 破防法が適用されるとどうなるか、公安調査庁ガイドラインをつくった。その骨子を理解してもらうために新聞の見出しを読む。「共同生活できない」「布施、布教も不可」。オウム真理教の修行は何を目指すか。
 松本 解脱、悟りです。そして、周りの人を同じように高いレベルに導くことです。
 代理人 オウム真理教の宗教活動にとって、信者が共同で修行する意味は。
 松本 もともと修行というのは、その場にもエネルギーの蓄積があると考えていて、一緒に行っている人、瞑想で蓄積することが非常に重要なのです。第二点は、はばかることなく(宗教活動を)実践できるには、同じことを理解している人がいる場所が必要。だから、共同生活が必要であると考えます。
 代理人 破防法が適用されると、宗教活動が一切できなくなると解釈しているのか。
 松本 完全にできないと解釈している。
 代理人 八九年八月に真理党を設立し、九〇年二月の総選挙に出馬したが、そのさいに、多人数が立候補したのはなぜか。
 松本 それだけの人数があれば、新聞、テレビで特典があったので、それを利用して消費税反対などを訴えたかった。
 代理人 オウムの宣伝をしようとしたのではないのですか。
 松本 そういう要素もあります。
 代理人「政治的独裁者」というのはあなたはだれだと思うか。
 松本 ヒトラーを指します。
 代理人「思想的独裁者」とはだれだと思いますか。
 松本 毛沢東を指します。
 代理人 あなたが大ぼらを吹いて、「宗教的独裁者」になると、言っているとされるが。
 松本 仏教、ヨーガ、キリスト教の教えを理解、体現することをいう。
 代理人 あなた自身が、「政治的独裁者」や「思想的独裁者」になるということではないのか。
 松本 全くございません。
 代理人 あなた自身の説法を公安調査庁は年表にしている。まず、小乗、次に大乗、で、タントラ・ヴァジラヤーナ。順に説法を並べているが。
 松本 いや、そうじゃありません。誤っています。
 代理人 説法する前に信者のステージによって説法の内容が変わるのか。
 松本 当然、変わります。その人の修行の度合いによって違ってくると思います。
 代理人 説法を始めるについて、信者のステージについて、どのように判断しているのか
 代理人 あなたからみて、タントラ・ヴァジラヤーナは信者にどの程度理解されていたか。
 松本 全く理解されていなかった。
 代理人 公安調査庁は、選挙の後、選挙に負けたため、法律に従っていてはだめだと考えた、という位置付けをした。選挙の後、教団は何を考え、何をしようとしたのか。
 松本 教育では、小一から高三の受験前までを三カ月間で終わるシステムなど、いろいろとやった。
 代理人 その子たちにはどんな教育をしていたのか。
 松本 一般の小、中学生に対しては、経典を教科書代わりにするなどの変革をやった。
 代理人 オウムの子は情緒不安定で教育レベルが低かったという報道があったが、配慮はしていたのか。
 松本 もちろん、配慮していた。特に優秀な人がいて、数学などは、東大の博士課程を出た人が教育していた。各パートは専門家がやっていた。押し付け教育はやらないという方針だったので、ボイコットする子もいたとは聞いていた。
 受命職員 一応これで時間となったが。
(この発言がきっかけで、以後、陳述の打ち切りについてのやりとりになり、混乱のうちに終了するが、省略する)