「公安調査庁が提示した、破防法適用に関する「証拠の要旨」」(『オウム法廷』1下巻)

公安調査庁が提示した「証拠の要旨」】
 第一 処分の請求をしようとする団体(略)

 第二 請求事由の一=専制政治体制の樹立を目的としていること
 麻原彰晃こと松本智津夫の説法・予言等の内容、「基本律」等の法案作成構想の内容、その他関係証拠により認める。
 一 政治上の主義にかかる説法等 (1)国家建設の基本構想および祭政一致の国家体制についての説法等 「このたび、オウム真理教の『日本シャンバラ化計画』が打ち出されたわけです。この計画は、日本全体にオウムの聖なる空間を広げ、多くの聖なる人々をはぐくむことによって、日本を世界救済の拠点としようという比類なき遠大なものです。……皆で力を合わせて、私達のグルであられる尊師とシヴァ神の大いなる意思を実践していきましょう。『日本シャンバラ化計画』は世界シャンバラ化に向けての第一歩です」(八八年八月刊行『限りなく透明な世界へのいざない』
「……純粋な宗教的活動のみでは、様々な社会問題は解決されないということ。それゆえ、根本的に政治と宗教は切り離せない……徳によって政を行い、地上に真理を広める転輪聖王インド神話において世界を統一支配する帝王の理想像、世界の政治的支配者=筆者注)としての役割を果たしていきたい」(八九年十二月二十五日発行『マハーヤーナ』No.27)
(2)武力による支配・現行秩序の破壊についての説法等「力で良い世界をつくる。これこそ、タントラ・ヴァジラヤーナの世界だ。シヴァ神は、シヴァ神への強い信仰を持ち続けたタントラ修行者が、諸国民を支配することを望んでいらっしゃるんだ。これはもうそう断定してしまって差し支えない」(八九年二月十日発行『滅亡の日』)
「そして、もし真理を阻害するものがあるならば、それは打ち破っていかなければならないと。……もし君たち一人一人がそれができるならば、わたしは日本そのものがオウム真理教と変わる日は近いんじゃないかと、……そう確信しています」(八九年四月二十五日富士山総本部での説法)
「すべてを知っていて、生かしておくと悪業を積み、地獄へ落ちてしまうと。ここで例えば、生命を絶たせた方がいいんだと考え、ポアさせたと。……客観的に見るならば、これは殺生です。……しかし、ヴァジラヤーナの考え方が背景にあるならば、これは立派なポアです」(八九年九月二十四日世田谷道場での説法)
(3)権力集中・独裁制についての説法等
「九七年に日本を支配する王として君臨するビジョンを見た。これは神々の示唆であった」「真理に仇なす者、できるだけ早く殺す」(九四年二月二十二~二十四日ころ、明の初代皇帝朱元璋の遺跡巡りの際の中国での説法)
「正しい国家とは、統一された、しかも大いなる力、大いなる知慧を有した者が支配し、そして国民の幸福、国民の繁栄というものを実現することです。そして、これこそが真理の説く国家構想なのです」(九四年十一月二十五日発行『ヴァジラヤーナーサッチャ』No.4【特集 甦る伝説の理想郷―故事成語・権一に出づ―「真理の国家構想」の説話】)
 二「基本律」の内容等に関するものの要旨
(1)本団体は、九四年七月ころまでに、祭政一致専制国家樹立の際の憲法に当たる「基本律」、基本律等の作成方針を定めた「真理の御国の統治について」および刑法に当たる「太陽寂静国刑律草案」を作成したが、さらに、教育法、税法、徴兵法、政府組織法、国籍法、軍事法(戒厳令)、神聖法皇位承継法、警察法、検閲法等多数の法律を制定することとしていた。
(2)本団体が作成した「基本律」には「真理国基本律第一次草案」と「太陽寂静国基本律第一次草案」との二案があり、いずれも前文および二十条から成り、「真理の御国の統治について」は、「国称」「国是」「法皇の権限」「真理国人たる身分」等全十三項目から成る。
 その内容は、要旨以下のとおりである。
①主権者 初代主権者は、「神聖法皇」と称する麻原尊師である。
天皇の廃位 真理国の樹立と法皇の即位により、天皇は当然廃位され、葛城等の氏を与えて民籍に就かせる。
③国名 日本なる国称は、歴史的に見て天皇と分離不能で不適当であり、真理の御国が全く新しい理念を持った国であることを人々に理解させる上で、改称は絶大なる効果があり、「真理国」と仮称するが、他に「オウム国」「神聖真理国」「太陽寂静国」を候補とする。
④神聖法皇の正統性 神聖法皇は、シヴア大神の化身であり、「大宇宙の聖法」の具現者であって、何人といえどもその権威を侵してはならない。
⑤神聖法皇の権限 神聖法皇は、真理国の内治権と外交権(軍事権を含む)を独占し、国内の統治および諸外国に対する宣戦や講和、諸条約の締結を行う。
⑥議会制 真理国は、「大宇宙の聖法」を前提とした制律を行うから本来議会制は論理的に不適当な制度である。
⑦首都 新しい国の樹立にともない、新しい都を定める必要があり、富士山麓に新しい都を建設し、賢聖都または富士法都と称し、法皇居をおく。
⑧国章 国章は、梵字によるオウム字とする。
⑨暦 暦は、その建国の年を真理暦元年とする
⑩改正 基本律の改正は、神聖法皇のみが行う。
(3)「太陽寂静国刑律草案」(略)
(4)本団体が構想する国家とは、「シヴァ大神の化身」「大宇宙の聖法の具現者」であり「神聖法皇」と称する絶対者である松本が、立法・行政・軍事・外交・司法等の全権を掌握する主権者として君臨し、本団体構成員を「僧籍人」とし、僧籍大以外の者を「民籍人」として僧籍人の下位に置き、「僧籍人」に対しては「秘密金剛乗」により、「民籍人」に対しては「律」により、それぞれ統治するという祭政一致独裁国家である。
 この独裁国家においては、選ばれた者である本団体構成員(僧籍大)以外の国民(民籍人)には、納税の義務、軍役の義務および「三宝」(神聖法皇、大宇宙の聖法、僧)を敬い修行に励むべき義務が課せられており、その国家体制は、現行国家体制と相入れない松本独裁の祭政一致専制政治体制である。
 三 教義に関するものの内容の要旨
(1)教義(共同目的)
 本団体の目的は、麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め、これを実現することである。
 ここでいうオウム真理教の教義は、松本の教えの集大成であり、原始仏教小乗仏教大乗仏教、秘密金剛乗等を混淆した独特の教義であるが、衆生救済のためには、シヴァ大神の化身である松本が統治する国を我が国に樹立する必要があるとし、これを実現するためであれば手段を選ぶ必要はなく、武力の行使も殺人も許されるというものである。
(2)政治上の主義と教義の関係
 ア 本件規制請求における政治上の主義は、現行憲法に基づく民主主義体制を廃し、松本を独裁的主権者とする祭政一致専制政治体制を我が国に樹立するというものであり、この政治上の主義は、前記のとおり、教義の重要な一部を成すものである。
 イ 本団体は、上記政治上の主義を実現するため、当初は選挙を通じて政治的権力を獲得すべく、八九年八月、政治団体としての届け出をし、翌九〇年二月施行の衆議院議員総選挙に松本を始め幹部多数が立候補したが、惨敗するなどしたため、以後、その戦略を転換し、武力による破壊、特に「都会を完全に死滅」させた上で、松本の主宰する祭政一致独裁国家を建設することを志向するところとなり、武装化と武力による反対勢力の抹殺という路線を取るに至った。
 現実に、武装化という面では、サリンの製造、サリン七十トンの製造プラントの建設、これに見合う原材料の購入、これを散布するためのヘリコプターの輸入、自動小銃の大量生産の着手、多数の自衛隊員の獲得に成功するなど着々と武装化を推進してきた。
 また、武力による抹殺という面では、松本サリン事件、猛毒のVXを使った殺人事件(この事件については続刊で詳しく述べる予定=筆者注)はもとより、地下鉄サリン事件を惹起して現に都市部を攻撃し、強制捜査開始後も、一般市民を狙った新宿駅青酸ガス事件、都知事を狙った東京都庁爆発物取締罰則違反事件等を継続している。
 このように、本団体の教義は、単に宗教上の理念ということはできず、宗教上の教義の重要な一部が、まさに現実的な「政治上の主義」となっている。
(3)教義の危険性
 松本は、秘密金剛乗について、「目的達成のためには、他人の財物を盗むこと(ラトナサンバヴァの法則)、悪業を積む者を殺すこと(アクショーブヤの法則)、修行の障害になる配偶者を奪い取ること(アミターバの戒律)、真理の実践を行う者にとってすべての行為が肯定され早く結果を出すことが第一であり結果のためには手段を選ばないこと(アモーガシッディの法則)などが許され、場合によっては殺人をも肯定・実行し、それが功徳を積むことであり」、「グル(松本)を絶対視し、そのグルに帰依し、自己を空っぽにし、その空っぽになった器にグルの経験ないしエネルギーをなみなみと満ちあふれさせること、つまり、グルのクローン化をすることである」旨説いている。
 また、松本は、マハー・ニルヴァーナ(涅槃の世界)に至るためには、現実世界を変革し、「現行憲法に基づく民主主義体制を廃し、シヴァ大神の化身である自己が統治する国を我が国に建設する必要がある」と唱え、そのためには、前記秘密金剛乗の教えに則り、武力により現行社会秩序を破壊しなければならず、その方策として大がかりな武装化と反対勢力の排除・抹殺をしなければならない旨説いている。
 このように、前記のような松本の説く秘密金剛乗の教えは、それ自体極めて危険な部分であるが、前記の政治上の主義を推進する方策を支える思想・行動原理であるので、なお一層危険である。
 第三 請求事由の二=政治目的実現の障害となる勢力を排除・抹殺する方針を取ったこと
 以下の証拠により認める。
 一 本団体の沿革(略)
 二 本団体が九〇年二月施行の衆議院議員総選挙に惨敗したことならびに熊本県阿蘇郡波野村の本団体施設をめぐり地元住民等から反対運動等を展開されたことおよび国土利用計画法違反等により強制捜査を受けたことを、国家権力等による弾圧であるととらえた上、前記政治上の主義=第二の三の(2)参照=を実現するためには、武力による現行社会秩序の破壊が必要であるとしたと認められる証拠の要旨
(1)前記衆議院議員総選挙に惨敗した直後の同年三月、本団体は、「尊師が東京四区全体で約千七百票にとどまっているのは、選挙で不正が行われ、オウムをつぶそうとする権力等(マスコミ)による弾圧である」(『極智新聞』九〇年三月第五号)と主張し、また、松本は、「第四期、破壊の直前になると、タントラヤーナの修行においても救済できない、そういう魂の世界が人間界に形成されます。ここで登場してくるのが、ヴァジラヤーナ、つまりフォース、力を使って、武力を使っての破壊です」と説いた。
 そして、前記総選挙惨敗直後の同年三月初旬、本団体は、ボツリヌス菌を空中から散布することを企図して、その培養実験を開始し、さらに、前記強制捜査を受けた直後の同年十一月には、熊本県阿蘇郡波野村の本団体施設「シャンバラ精舎」において、毒ガス「ホスゲン」の製造研究を開始した。
(2)このようにして、本団体は、武装化を開始し、同年以降、ボツリヌス菌ホスゲン炭疽菌の開発・研究をして、それらを各地で散布した。例えば、九三年六月のいわゆる亀戸道場悪臭事件もその一つである。また、この間の九二年九月ころ、松本は、前記波野村国土利用計画法違反の関係で本団体を弾圧した検事数名にもきっと報いがくる旨の説法をした。
(3)武器の開発に着手した本団体は、その後、山梨県西八代郡上九一色村および同県南巨摩郡富沢町等の活動拠点内に、サリン等の神経ガスおよび自動小銃を大量製造するため、大規模な施設を設けて、その研究・開発および製造を開始し、また、神経ガスを散布するためのヘリコプターを購入するなどして、本団体の大がかりな武装化を進めていった。=詳細は後記第五の五の(3)(4)のとおり。

 第四 請求事由の三=松本サリン事件と犯行の目的
 一「長野地方裁判所松本支部裁判官、松本市および反対派住民が結託して本団体の活動拠点の建設を妨害し弾圧しているとして、これを本団体の政治目的を実現する上での障害ととらえた」との事実に関連する松本の説法は以下のとおりである。
「現代は、まさに世紀末である。……それは司法官が乱れ、そして宗教家が乱れると。この司法官が乱れとは、例えば裁判が正、あるいは邪というものの判定を正しくできなくなり、世の中に迎合し、そして力の強いものに巻かれる時代、……まさに現代はその時代である。……この松本支部道場は、初めはこの道場の約三倍ぐらいの大きさの道場ができる予定であった」(九二年十二月十八日松本支部での説法)
 二 犯行目的、犯行状況等
(1)犯行目的および謀議・準備状況(略)
(2)犯行状況(略)

 第五 請求事由の四=将来さらに団体の活動として暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあることについて
 一「本団体は、松本を絶対者とし、目的のためには手段を選ばず殺人行為をも正当化する教義を盲信して、同人の意のままに行動する多数の者によって構成されているものである」との事実について
(1)絶対者である松本なしで教団は成り立たない旨の構成員の供述
「正悟師以上になると……尊師のロボットですから、尊師が言ったこと以外はやらないようにできていますので、勝手に判断して何かをやるということは出来るはずはありません」
オウム真理教の組織は、形式上はピラミッド形を成しているが、基本的には、尊師と信徒は一対一の関係でつながっている。したがって、信徒にとって尊師は絶対的存在になる」
(2)松本の指示があればいかなる違法行為も行う旨の構成員の供述
「まだサリンが残っているのなら、逮捕されていない残りの幹部が尊師やオウム真理教に追い打ちをかける者に対してサリン事件を再現するでしょう」
「サマナは、尊師のためならば死んでもいいと思っています。教団では、現世の社会通念や常識は通用しません。……このような教団ですから、今後、マインド・コントロールされた信者が、尊師の奪還など過激な行動にでる可能性が全くないとは言えません」
 二(略)
 三 本団体は、松本サリン事件以降も、目的のためには手段を選ばす殺人行為をも正当化する極めて危険な教義の実践として、以下の凶悪事件を繰り返し敢行した。
(1)地下鉄サリン事件(略)
(2)新宿駅青酸ガス事件(略)
(3)東京都庁爆発物取締罰則違反事件(略)
 四 人的・物的両面において、さらに暴力主義的破壊活動に及ぶ能力があることについて
(1)一連の殺人等凶悪重大事件によって、松本を始め多数の本団体構成員が逮捕・起訴され、社会的な批判を受けたにもかかわらず、現在なお、出家信徒である構成員約八百人と在家信徒である構成員約七千五百人以上が松本の教えを信奉して本団体にとどまっている(九五年十一月現在)。
 なお、一連の凶悪重大事件には幹部ではない一般の構成員も多数関与しているところであり、一般の構成員も、松本の指示により凶悪重大事犯に及ぶ蓋然性が高い。すなわち、本団体関連事件で起訴された本団体構成員は百八十五人であり、位階別にみると、正悟師以上の者は十九人で全体の一割程度である。主要な事件をみても、松本サリン事件で起訴された者十三人中、正悟師以上は松本、遠藤誠一新実智光土谷正実および渡部和実の五人、地下鉄サリン事件で起訴された者十三人中、正悟師以上は松本、遠藤誠一新実智光土谷正実および井上嘉浩の五人、武器等製造法違反事件で起訴された者十七人中、正悟師以上は松本一人、東京都庁爆発物取締罰則違反事件で起訴された者四人中、正悟師以上は井上嘉浩一人であり、サリン製造殺人予備事件では、起訴された者四人中、正悟師以上はいない(以上の起訴人員数は九五年十二月三十一日現在)。
(2)関係者の供述等によって化学・生物兵器の製造等に関与したとされた者四十人のうち、公判請求された者は二十五人で、現在いずれも公判係属中である。残り十五人のうち、少なくとも九人については本団体での活動が確認されており、その余についてはその活動状況が確認できない。
 また、関係者の供述等によって自動小銃の製造に関与したとされた者六十四人のうち、公判請求された者は十七人で、現在いずれも公判係属中である。残りの四十七人のうち、少なくとも二十七人については本団体での活動が確認されており、その余についてはその活動状況が確認できない。
 化学・生物兵器自動小銃の製造に携わった者のほとんどが本団体の旧科学技術省、旧厚生省に所属していた構成員であり、現在、少なくとも旧科学技術省の構成員四十九人、旧厚生省の構成員四人の計五十三人については、本団体での活動が確認されている。
(3)現在、出家信徒として本団体での活動が確認されている者のうち、少なくとも八人は国立大大学院の薬学系、理工学系や農学系を卒業または中退した者であり、少なくとも百七人は大学等で医学・薬学系、理工学系や農学系等の専門知識を学んだ者(このうち、国公立大・私立大の医学・薬学系、理工学系や農学系学部等を卒業または中退した者は七十二人)である。このほか、少なくとも八十二人は国公立大・私立大の文科系学部を卒業または中退した者である。
(4)本団体構成員のうち、自衛隊員の経歴がある者は四十三人であり、出家信徒は十六大、在家信徒は二十七人である。現在、出家信徒十六人のうち、少なくとも九人については本団体での活動が確認されており、その余についてはその活動状況が確認できない。
(5)以下の特別手配者七人が、現在逃走中である。(略)
(6) 一連の事件に関与して逮捕された本団体構成員は四百三人であり、このうち起訴された者は百八十五人(公判請求百八十一人、略式請求四人)、起訴されなかった者は二百十八人である(九六年一月八日現在)。
 公判請求された者のうち六十六人がすでに判決を受けているが、その内訳は、実刑判決を受けた者が六人(懲役四年六月―一人、懲役二年六月―一人、懲役一年十月―二人、懲役一年―二人)、罰金刑に処せられた者が二人、執行猶予に付された者が五十八人となっている。なお、執行猶予判決や略式命令および罰金刑を受けて釈放された六十四人のうち、少なくとも七人については本団体での活動が確認されているが、公判において本団体への復帰を表明している三人を含む二十二人の所在が確認されていない。
 また、起訴されずに釈放された二百十八人中、少なくとも四十五人については本団体での活動が確認されているが、その余についてはその活動状況が確認できない。さらに、前記懲役一年の実刑判決を受けた二人および裁判係属中(拘置中)の者のうち三人は、釈放された後は本団体に復帰する旨表明している。
 また、裁判継続中であった脱会構成員○○に対して本団体が復帰を働き掛けている例もあり、同人は公判において、「面会に来た信者が、『人を殺しても間違ってはいない。早くあなたも戻ってきなさい』などと誘ってくる。そこまで彼らはエスカレートしている。オウム真理教を解散させ、彼らを本当に強制的でも、逮捕するなり保護してほしい」旨供述している。
(7)本団体は、九五年六月ころから、いわゆるオウム関連グッズを販売する「サティアン・ショップ」を開設し、同年十二月初旬にも、東京都世田谷区内および杉並区内に二店舗を増設するなどして、同月現在、全国支部・道場等に十六店舗を有し、各店舗において、松本の顔写真や「修行するぞ」などと印刷されたTシャツやステッカー、松本の説法等を収録したビデオ、カセットーテープおよび松本の説法等を掲載した書籍等を販売している。
 また、本団体は、各店舗の客に対し、本団体の各種イベントを収録したビデオ上映会やヨガ教室への参加を呼び掛け、その活動を通じて、会員の勧誘を行うなどし、新たに構成員を獲得している。
 五「本団体は、前述のように教義である松本の説法・予言等をそのまま実行に移してきたものである」との事実について
(1)殺人行為を正当化する教義 松本は、八九年四月ころから、殺人を正当化する説法を盛んに行うようになり、同年九月二十四日には、「(中略)例えば、生命を絶たせた方がいいんだと考え、ポアさせたと。ヴァジラヤーナの考え方が背景にあるならば、立派なポアです」と説法した。
 そして、同年十一月四日、松本の指示を受けた本団体構成員多数は、坂本弁護士一家殺害事件を敢行し幼児までも平然と殺害した。
(2)武力による現行社会秩序の破壊(政治上の主義の推進)(略)
(3)ハルマゲドン 松本は、九二年九月ころから、ハルマゲドンについてしきりに予言するようになり、「(中略)恐怖に満ちた現象が連続的に起きる……。それは九六年から九八年の一月までの間に起きる。大都会においては十分の一くらいの人口しか残らない」などと唱えた。これらの予言に呼応して、本団体は、松本の指示で次のように武装化を進めた。(中略)
(4)武装化の推進
 松本は、九四年二月下旬から三月にかけて、「国家に対する対決の姿勢を示したことはない。しかし、示さなければわたしとわたしの弟子たちは滅んでしまう」などと、国家に対する対決姿勢を示し、これと断固として戦うべきであると宣言した。 同年三月ころ、かねて計画していた自動小銃一千丁の本格的製造を目指し、部品製造を開始するなどし、以下のように武装化を進めた。(中略)
(5)松本サリン事件 松本は、九二年十二月十八日、「(我々に)圧力を加えている側から見た場合、どのような現象になるのかを考えると、わたしは恐怖のために身のすくむ思いである」と説法した。
 他方、本団体は、前記のとおり武装化を進める中で、九四年二月中旬、サリン約三十キログラムの製造にこぎつけ、同年六月二十六日に至リサリン噴霧車を完成させたことから、同月二十七日、松本サリン事件を敢行したものである。
 この松本サリン事件は、武装化の推進という意味ではサリンの大量生産(七十トン)に道を開き、反対勢力の抹殺という意味では初めて多数の無差別殺人を敢行したものである。(中略)
(6)地下鉄サリン事件 松本は、九五年三月二日発行の著書『日出づる国、災い近し』の宣伝ビラにおいて、「九日前に予言されていた阪神大震災!――それは世紀末の日本に襲いかかる、数々の恐怖と惨劇のプロローグにすぎない」、同月八日、「すでに戦争は始まっていることになぜ気付かないんだ!」などと予言した上、本団体は、同月十九日には、裏面に地下鉄の路線図等を記載した前記『日出づる国、災い近し』の宣伝ビラを配布した。
 そして、翌二十日、地下鉄サリン事件を敢行した。
(7)新宿駅青酸ガス事件、東京都庁爆発物取締罰則違反事件 九五年三月二十二日の本団体への一斉捜査開始後の翌二十三日、松本は、ロシア発のラジオ放送を通じて、「オウム真理教の信徒諸君。あなた方は、三月二十二日に行われた東京および上九での二千五百人の警官を動員しての強制捜査をご覧になられたかな?(中略)君たちは、死に際して、決して後悔しないようにしなければならない。さあ、一緒に救済計画を行おう。そして、悔いのない死を迎えようではないか」との説法を行った。
 そして、同年五月五日新宿駅青酸ガス事件、同月十六日東京都庁爆発物取締罰則違反事件を敢行した。
 六「松本は、自己を始め本団体構成員の逮捕・起訴をこれまでにない激しい弾圧ととらえている上、かねてから、九七年にハルマゲドンが起き、同年に自己が日本の王として君臨する旨予言し、また、今回の弾圧もあらかじめ予言していたところであって必ず解放されると予言している」との事実について
 ア 九〇年の波野村進出に絡む国土利用計画法違反事件当時の松本自身の発言
「世界的に名を残す宗教にオウム真理教はこれから発展していくんじゃないかなと。ただまあ、それだけになる条件を一つだけ備えていませんけどね。……それは何かというと、それは教祖の逮捕です」
 イ(略)
 ウ 九四年二月、中国のホテルにおける中川智正らに対する説法 「九七年に日本を支配する王として君臨するビジョンを見た。これは神々の示唆であった」
 エ 松本著『亡国日本の悲しみ』(九五年五月十八日発行)
不当逮捕し続けるなど、決してやってはならないことをやり、それをさらにエスカレートさせていっている。必ずや神々の怒りが爆発するであろう」(四六ページ)
(略)
 オ ○○著『智慧の声』(九五年六月発行『真理』No.48、二八ページ)
「逮捕される以前、麻原尊師は、ノストラダムスの予言の解釈をされてわたしにこう言われたことがあります。『九五年から、しばらく自分は姿を表に現さない』そしてその次に現れるのが九七年らしいのです」
 カ 九五年六月十一日の大阪支部における説法における松本の妻松本知子の説法「私たちにとって尊師は師匠でありグルであります。逮捕されたといってもこれも修行の一つであり、尊師は必ず出てきます」
 これについて、本団体は、今回の強制捜査開始後、「予言のとき――第二回予言されていた『逮捕』」(九五年六月発行『真理』No.48増刊号2、二~五ページ)において、「尊師の逮捕はまさに予言どおりだったのです」と評している。
 七 松本の説法・予言等は決してスローガンにとどまるものではなく、現に実現されるべきものとして本団体構成員に示され、現に実現されているところであり、松本は自己を含む本団体構成員の逮捕・起訴をこれまでにない激しい弾圧ととらえている上、前記のとおりハルマゲドンが起き、自己が日本の王として君臨する等予言しているのであるから、松本に絶対的に服従している本団体構成員がこれらの予言を成就実現するためにあらゆる手段を尽くし、殺人等の暴力主義的破壊活動に及ぶ蓋然性が極めて高い。 松本の指示があればいかなる違法な行為も行う旨の構成員の供述があるほか、起訴された本団体構成員は、現に以下のとおり供述している。
「グル(霊的指導者のこと。本団体では松本を指す)の指示ならば自分の命も投げ出せる、自分の親でも殺せる」(上申書)
「(ハルマゲドンで)社会そのものが崩壊してしまうのだから、法律よりも救済の方が大事だと思った」(○○)
「麻原は救済のために教団を作ったのではなく、王様になるためオウムを作った。彼にとって宗教は手段であり、信者は兵隊か駒」(○○)
「彼らは犯罪予備軍だ」「いまだにサマナはだまされている。このままでは第二、三の犯罪を犯しかねない」(○○)

 法の制定以来初めて開かれる弁明手続きだった。しかし、四十三年前に制定された法律は、時代にあまりにそぐわなかった。例えば傍聴席。法は「新聞、通信または放送の事業の取材業務に従事する者は、手続きを傍聴することができる」と定めていて、それをもって手続きの「公開性」を保ったことになっていた。しかし一般の傍聴は許されず、しかも「出版」とか「その他」という用語もないから、雑誌記者も傍聴できなかった。テレビの中継も実現しなかった。
 そしてそれ以上に問題だったのは、団体規制の必要性を主張する「証拠」の性質だった。法律が規制の要件としているように、その団体が将来、暴力主義的破壊活動を行う「明らかなおそれ」があることを証明しようとする証拠にしては、その内容は公安調査庁が収集した資料や捜査当局から提供された供述調書を報告書にまとめたものばかりで、厳密さが要求される刑事裁判の「証拠」に比べて明らかに劣っていた。その後公安調査庁が提出した証拠の中には、公判の様子を伝える新聞記事まで含まれていた。「裁判なら、こんなことはありえない」と教団側代理人がいう「証拠」によって進められる危うさは、この手続きの最後までつきまとっていた。