京都アニメーション放火殺人事件(京都市伏見区放火殺人事件、2019年07月18日)の資料収集の会

(元・オウム真理教事件・資料収集および独立検証の会、できるかぎり同時進行)

「破壊活動防止法公示」(全文)(『オウム法廷』1下巻)

破壊活動防止法公示】(全文)
 公安調査庁告示第一号
 破壊活動防止法(一九五二年法律第二百四十号)所定の破壊的団体の規制処分の請求に関し、同法第十二条の規定により次のように弁明手続きを行うので、告示する。
 一九九五年十二月二十日
  公安調査庁長官 杉原弘泰
 一 処分の請求をしようとする団体
 1 団体
 麻原彰晃こと松本智津夫を教祖・創始者とするオウム真理教の教義を広め、これを実現 することを目的とし、同人が主宰し、同人および信徒、信徒を指導する者その他の同教義 に従う者によって構成される団体
 2 主たる事務所の所在地
 山梨県西八代郡上九一色村
 3 代表者
 氏名   麻原彰晃こと松本智津夫
 年齢   当四十年(一九五五年三月二日生)
 職業   団体主宰者
 居所   代用監獄警視庁本部留置場在監
 二 処分の請求をしようとする事由の要旨
 1 被請求団体は、政治上の主義として、現行憲法に基づく民主主義体制を廃し、麻原彰晃こと松本智津夫を独裁的主権者とする祭政一致専制政治体制を我が国に樹立することを目的としているものである。
 2 本団体は、政治目的を実現するため、一九八七年ころから、全国各地に活動拠点を設け始め、九四年六月ころまでには、主要な拠点である山梨県西八代郡上九一色村所在の「サティアン」と称する大規模な活動拠点兼本団体構成員の居住施設群のほか全国二十八ヵ所に活動拠点を設けるなどしてその勢力を拡大するとともに、本団体内部に我が国の行政機構を模倣した省庁制度を導入して組織態勢の整備を図るなどしていた。
 その間の九〇年二月施行の衆議院議員総選挙に際し、政治目的を実現するため、政治団体真理党」を結成して松本および多数の本団体構成員が立候補したものの、全員落選した上、活動拠点の一つとして進出した熊本県阿蘇郡波野村の本団体施設をめぐり、地元住民や自治体から反対運動等を展開され、同年十月には、国土利用計画法違反等により強制捜査を受け、本団体構成員が逮捕・起訴されたことなどから、本団体は、これらを国家権力等による弾圧であるととらえ、政治目的を実現するためには、武力による現行社会秩序の破壊が必要であるとした上、そのころから武器の開発に着手し、前記上九一色村等の活動拠点内に、サリン等の神経ガスおよび自動小銃を大量製造するため、大規模な施設を設けて、その研究・開発および製造を開始し、また、神経ガスを散布するためのヘリコプターを購入するなどして、本団体の大がかりな武装化を進めるとともに、政治目的実現の障害となるべきあらゆる勢力を排除・抹殺するとの方針を取るにいたった。
 3 本団体は、九一年六月ころから、活動拠点の一つとして、長野県松本市内において本団体道場の建設に着手しようとしたが、これに反対する住民が、本団体の反社会性を主張するなどして、その松本市進出を阻止するための運動を展開し、長野地方裁判所松本支部に対して建築工事禁止等仮処分命令の申し立てをし、これが認容されたため、同建物の建築規模を予定の約三分の一に縮小することを余儀なくされたことに加え、前記仮処分事件の本案訴訟が提起され、さらに、同道場付近住民の反対により、松本市が同道場への上水道を敷設しなかったことなどから、同支部裁判官、松本市および反対派住民が結託して本団体の活動拠点建設を妨害し弾圧しているとして、これを本団体の政治目的を実現する上での障害ととらえた。
 このような状況下において、本団体は、九四年二月ころ、かねてから研究開発と量産を進めていたサリンを約三十キログラム製造することにこぎつけ、同年六月下旬に至って加熱式噴霧器を荷台に設置したサリン噴霧車を完成させた。そこで、本団体は、武器としてのサリンの効果を見定め、その使用に習熟することにより武装化を推進し、かつ、政治目的実現の障害である前記長野地方裁判所松本支部の裁判官を付近住民とともに殺害し、反対勢力の排除・抹殺をする目的で、松本および本団体構成員である村井秀夫ら多数の者において、殺意をもって、同月二十七日午後十時四十分ころ、同市内の前記裁判官宿舎付近において、前記噴霧車でサリンを加熱・気化させて発散させ、よって、付近住民七名をサリン中毒により死亡させて殺害するとともに、同支部裁判官を含む百四十四名に対してサリン中毒症の各傷害を負わせたが殺害の目的を遂げず、もって、政治上の主義を推進する目的で、団体の活動として、刑法第百九十九条に規定する行為およびその未遂をなしたものである。
 4 本団体は、松本を絶対者とし、目的のためには手段を選ばず殺人行為をも正当化する教義を盲信して、同人の意のままに行動する多数の者によって構成されているものであるが、前記政治上の主義を推進するため、その障害となるあらゆる勢力を本団体に対して弾圧を加えるものとしてとらえ、同教義の実践として、前記松本市内におけるサリンを用いた本件殺人・同未遂の行為に及んだものである。
 その後も、本団体は、前記教義の実践として、九五年三月二十日の東京都千代田区内等の地下鉄におけるサリンを用いた殺人等事件、同年五月五日の同都新宿区の地下鉄新宿駅構内における青酸ガス事件、同月十六日の同区東京都庁における爆発物取締罰則違反事件等の凶悪重大事犯を繰り返し、東京都知事、一般市民等を次々と殺害し、または殺害しようとしてきたものである。
 しかも、これら一連の殺人等事件により、松本を始め多数の本団体構成員が逮捕・起訴された後も、松本が政治目的および前記教義を維持して絶対者として本団体を支配し、今なお松本に完全に従属する出家信者約八百人、その他多数の在家信者が存在する。さらに、本団体は、いまだ多数の活動拠点を確保しつつ、新たに、構成員や布施収入、出家信者のアルバイトからの献金等による資金を獲得するなどして組織の維持に努め、かつ、本団体には、一連の凶悪事件に関与し逃走中の構成員のほか、化学・生物兵器、銃器等に関する科学的・専門的知識を有する者が多数存在し、サリン・青酸ガス等は小規模な装置でも製造可能であり、本団体には、人的・物的両面において、さらに暴力主義的破壊活動におよぶ能力がある。
 また、本団体は、前述のように教義である松本の説法・予言等をそのまま実行に移してきたものであるところ、松本は、自己を始め本団体構成員の逮捕・起訴をこれまでにない激しい弾圧ととらえている上、かねてから、九七年にハルマゲドンが起き、同年に自己が日本の王として君臨する旨予言し、また、今回の弾圧もあらかじめ予言していたところであって必ず解放されると予言しているのであり、松本に絶対的に服従している本団体構成員がこれらの予言を成就実現するためにあらゆる手段を尽くし、殺人等の暴力主義的破壊活動におよぶ蓋然性が極めて高い。
 以上によれば、本団体は、前記一連の逮捕・起訴を本団体の政治目的の実現を妨害し弾圧するための政治的攻撃であるとし、裁判所、警察等の国家機関あるいは一般市民等を対象として、要人テロ、無差別大量殺人等の凶悪重大事犯に及ぶ危険性が極めて高く、継続または反覆して将来さらに団体の活動として破壊活動防止法所定の暴力主義的破壊活動を行う明らかなおそれがあり、かつ、破壊活動防止法第五条第一項の処分によっては、そのおそれを有効に除去することができないと認められるので、本団体に対する解散の指定を請求する必要がある。
 三 弁明の期日および場所
 1 弁明の期日
 一九九六年一月十八日午前十時から
 2 弁明の場所 東京都千代田区霞が関一丁目一番一号
 法務省別棟
 四 付記
  破壊活動防止法
(通知)
 第十二条 公安調査庁長官は、前条の請求をしようとするときは、あらかじめ、当該団体が事件につき弁明をなすべき期日および場所を定め、その期日の七日前までに、当該団体に対し、処分の請求をしようとする事由の要旨並びに弁明の期日および場所を通知しなければならない。
 2 前項の通知は、官報で公示して行う。この場合においては、公示した日から七日を経過した時に、通知があったものとする。