京都アニメーション放火殺人事件(京都市伏見区放火殺人事件、2019年07月18日)の資料収集の会

(元・オウム真理教事件・資料収集および独立検証の会、できるかぎり同時進行)

『カラマーゾフの兄弟』第8篇

『カラマーゾフの兄弟』P040-042   (『ドストエーフスキイ全集』第13巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社))

「何でもないよ!」とミーチャは歯ぎしりした。「グルーシェンカ、お前は正直にしたいと言うが、おれは泥棒なんだよ。おれはカーチカの金を盗んだんだ……なんて恥さらしだ、なんて恥さらしだ!」 「カーチカ? それはあのお嬢さんのこと? いいえ、あんた盗み…

『カラマーゾフの兄弟』P028-039   (『ドストエーフスキイ全集』第13巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社))

ぜん立ちどまって、グルーシェンカに向いてこう言った。 「Pani, ejeli khchesh ists za mnoyu, idzmi, esli ne-bivai zdorova!(もしわたしに従う気があるなら、一緒に行こう、それが厭ならさようならだ!) こう言って、彼は憤懣と野心のために息を切らし…

『カラマーゾフの兄弟』P016-027   (『ドストエーフスキイ全集』第13巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社))

こくった、大きな靴が映じたのみである。ぜんたいに二人の紳士《パン》はずいぶん垢じみた身なりをしていた。 「まあ、laidakだなんて! 何だってこの人はきたない言葉を使うんだろう?」と急にグルーシェンカは怒りだした。 「パーニ・アグリッピナ、|この…

『カラマーゾフの兄弟』P003-015   (『ドストエーフスキイ全集』第13巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社))

第八篇 ミーチャ 第六 おれが来たんだ ドミートリイは街道を飛ばして行った。モークロエまでは二十露里と少しあったが、アンドレイのトロイカは、一時間と十五分くらいで間に合いそうな勢いで疾駆するのであった。飛ぶようなトロイカの進行は、急にミーチャ…

『カラマーゾフの兄弟』P426-433   (『ドストエーフスキイ全集』第12巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社))

譲ってやるんだよ。僕はその二人のものにこう言ってやる、無事においで、僕のそばを通り抜けておいで、僕は……」 「君は?」 「もうたくさん、出かけよう。」 「本当に、もう誰かに言わなくちゃならない(とペルホーチンは相手を見つめながら)、君をあそこへ…

『カラマーゾフの兄弟』P420-425   (『ドストエーフスキイ全集』第12巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社))

けて『太陽が昇ったら』、ミーチェンカは、この塀を飛び越すのだ……フェーニャ、お前はどんな塀だかわからないだろう。いや、何でもないんだよ……まあ、どっちでもいい、明日になったら噂を聞いて、なるほどと思うだろう……今日はこれでさようならだ! おれは邪…

『カラマーゾフの兄弟』P408-419   (『ドストエーフスキイ全集』第12巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社))

がありません。」 「そのかわり、わたしがあなたに代って考えて上げました! 考えて考えて、考え抜きましたの! わたしもうまる一月の間、この目的をもって、あなたを観察しておりました。わたしは幾度も、あなたがそばを通りなさるところを見ましてね、ああ…

『カラマーゾフの兄弟』P396-407   (『ドストエーフスキイ全集』第12巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社))

慄えるようであった。もしちょうど今日という日を狙ってフョードルのところへ行くことに決めたらどうしよう? これを心配したために、彼はグルーシェンカにも言わず、また家の人にも、『たとえ誰が来ても、自分がどこへ行ったか、決して知らせてはならぬ』と…

『カラマーゾフの兄弟』P384-395   (『ドストエーフスキイ全集』第12巻(1959年、米川正夫による翻訳、河出書房新社))

棺の府を見つめた。なき人は胸に聖像をのせ、頭に八脚十字架のついた頭巾をかぶり、全身をことごとく蔽われたまま、じっと横たわっている。たった今この人の声を聞いたばかりで、その声はまだ耳に響いている。彼はまたじっと耳をすましながら、なおも声の響…