京都アニメーション放火殺人事件(京都市伏見区放火殺人事件、2019年07月18日)の資料収集の会

(元・オウム真理教事件・資料収集および独立検証の会、できるかぎり同時進行)

1990-01-01から1年間の記事一覧

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP481-P504

れじゃありません(もっとも、わたしも多少は聞きましたがね)。わたしがいってるのは、あなたがしきりに嘆息していらっしゃることですよ! あなたの内部では。たえずシルレルがもだえている。だからこんどは、ドアの外で立ち聞きするな、なんてことになるん…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP457-P480

か突拍子もない方法で事件をかたづけようという気が、あなたの頭に浮かぶようなことがあったら――つまり自分で自分に手をかけるようなことがあったら(これはばかばかしい想像ですが、まあ一つ許してください)、その時は――短くてもいいから、要領をえた書き…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP433-P456

ができた。なにしろ資産を持っている孤児は、まる裸の孤児よりずっとしまつがいいので、自分の提供した金がいろいろ役に立った――などと報告した。彼はソーニャのことも何やらいって、二、三日のうちに、自分でラスコーリニコフをたずねようと約束した。そし…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP409-P432

の拍子に)、ナポレオンならこんなことでちゅうちょするどころか、それが非モニュメンタルだなんてことは夢にも考えなかったろう……いや、そこに何をちゅうちょすることがあるのか、それさえまるでわからなかったにちがいない、とこう考えついたときには、ぼ…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP385-P408

りませんよ」 部屋の中がしいんとなってしまった。泣いていた子供までが黙りこんだ。ソーニャは死人のように青い顔をして立ったまま、ルージンの顔を見つめるだけで、ひと言も返事ができなかった。彼女はまだ話がよくのみ込めないらしい。幾秒か過ぎた。 「…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP385-P408

りませんよ」 部屋の中がしいんとなってしまった。泣いていた子供までが黙りこんだ。ソーニャは死人のように青い顔をして立ったまま、ルージンの顔を見つめるだけで、ひと言も返事ができなかった。彼女はまだ話がよくのみ込めないらしい。幾秒か過ぎた。 「…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP385-P408

りませんよ」 部屋の中がしいんとなってしまった。泣いていた子供までが黙りこんだ。ソーニャは死人のように青い顔をして立ったまま、ルージンの顔を見つめるだけで、ひと言も返事ができなかった。彼女はまだ話がよくのみ込めないらしい。幾秒か過ぎた。 「…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP361-P384

なことはくだらない枝葉の問題ですよ! わたしなんかも、いつか自分の両親が死んだのを悔んだことがあるとすれば、それはもう、いつまでもなく今です。もしもまだ両親が生きていたら、それこそプロテスト(反抗)でもって、うんと心胆を寒からしめてやったも…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP337-P360

え、今まで押えていた声がりんりんと響きだした。 「許すわけにいきません!」と彼は出しぬけに叫ぶと、力いっぱい拳《こぶし》で机をたたきつけた。「あなた聞こえますか、ポルフィーリイ・ペトローヴィチ? 許すわけにいきません!」 「こりゃどうも、あな…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP337-P360

え、今まで押えていた声がりんりんと響きだした。 「許すわけにいきません!」と彼は出しぬけに叫ぶと、力いっぱい拳《こぶし》で机をたたきつけた。「あなた聞こえますか、ポルフィーリイ・ペトローヴィチ? 許すわけにいきません!」 「こりゃどうも、あな…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP313-P336

あの女《ひと》は自分の姿を鏡に映して、つくづく見とれてたんですけど、着物なんて何ひとつないんですの、持ちものなんて何ひとつありゃしません、もう何年も前から! でもあの女《ひと》はこれまでついぞ一度も、人にものをねだったことはありませんでした…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP301-P312

ともなく思い出された……が、しかし、それについては、彼もすぐ安心してしまった。『もちろん、あんな男はあいつと十把ひとからげだ!』けれど、彼が真剣に恐れたのはだれかというと――それはスヴィドリガイロフだった……とにかく、いろんな心労が目の前に控え…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP277-P300

わたしがこのとおり服装《なり》ふりかまわなくなったのは、このごろ田舎に逼塞《ひっそく》しているからですよ。それでもやっぱり、当時はわたしも惜金のことで、牢《ろく》へぶち込まれようとしたこともあるんです。相手はネージンのギリシャ人でしたよ。…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP265-P276

「あなたはぼくをおたずねになったんですね……庭番のところで?」とうとうラスコーリニコフは口をきったが、なぜかばかに小さい声だった。 町人はなんの返事もしなければ、ふり返ろうともしない。ふたりはまた黙りこんでしまった。 「あなたはいったいどうし…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP253-P264

でも、単に偉人のみならず、わずかでも凡俗の軌道を脱した人は、ちょっと何か目新しいことをいうだけの才能にすぎなくとも、本来の天性によってかならず犯罪人たらざるをえないのです――もちろん、程度に多少の相違はありますがね。これがぼくの結論なんです…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP241-P252

てた。 「諸君、いったいなんだって、いすをこわすんです、国庫の損害じゃありませんか!」(ゴーゴリ『検察官』中の有名なせりふ)と、ポルフィーリイ・ペトローヴィチは愉快そうに叫んだ。 その場の光景は、まずこういったぐあいであった――ラスコーリニコ…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP229-P240

目で彼女を引きとめながら、ラスコーリニコフはせきこんでいった。「どうぞお掛けください。きっとカチェリーナ・イヴァーノヴナのお使いでしょう。どうぞ、そこじゃない、こちらへお掛けください……」 ラスコーリニコフの三つしかないいすの一つに腰をかけ、…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP217-P228

まったことだろう――ただひょいと手を伸ばして、優しい目つきを見せただけだもの……それに、あの子の目の美しいこと、そして顔ぜんたいの美しいこと! ドゥーネチカよりもきりょうがいいくらいだ……でも、まあ、あの服はなんということだろう、なんてひどい身な…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP205-P216

「いったいだれに話したんだい? きみとぼくくらいなものじゃないか?」 「それからポルフィーリイにも」 「ポルフィーリイにもしゃべったっていいじゃないか!」 「ときに、きみは、あの人たち――おふくろと妹を左右する力を、いくらか持ってるだろうね? 今…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP193-P204

れは酒のせいじゃありません。これはあなたがたを見たとたんに、ぼくの頭へがんときたんです……だが、ぼくのことなんか、つばでも引っかけてください! 気にとめないでください。ぼくは口から出まかせをいってるんです。ぼくはあなたがたに価しない……ぼくはと…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP181-P192

彼はからだじゅうおこりにでも襲われたような気持ちで、静かに階段をおりて行った。自分ではそれと意識しなかったけれど、張り切った力強い生命が波のように寄せて来て、その限りない偉大な新しい感覚が、彼の前進にみちあふれた。この感覚は、ひとたび死刑…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP169-P180

「酔ってるか酔ってねえか。わかったもんじゃねえ」と職人はつぶやいた。 「ほんとうになんの用なんですね?」そろそろ本気に腹を立てながら、庭番はまたもやどなりつけた。「何をいつまでもへばりついてるんだ?」 「警察へ行くのがこわくなったのかい?」…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP145-P168

識をひけらかしたかったんでしょう。それは大いに酌量《しゃくりょう》すべきことで、ぼくもべつにとがめ立てしません。ただぼくは今あなたがどんな人か、ちょっと知りたかっただけなんですよ。なぜといってね、おわかりでしょう。近ごろでは一般の福祉なる…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP121-P144

ーリニコフは顔をふり向けようともせずにたずねた。 「つかなかったとも、そのために気ちがいみたいにおこりだしたほどだよ。ことにぼくが一度ザミョートフをつれて来たときなど、そりゃたいへんだったぜ」 「ザミョートフを?……事務官を?……何のために?」…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP097-P120

ったか?」 ラヴィーザ・イヴァーノヴナは、気ぜわしない愛嬌《あいきょう》をふりまき、四方八方へ小腰をかがめながら、戸口まであとずさりして行った。ところが、ドアのところで、あけっ放しのすがすがしい顔に、ふさふさとしたみごとな亜麻色のほおひげを…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP086-P096

間に、何もかも思い出したのである! 最初の瞬間、彼は気がちがうのかと思った。恐ろしい悪寒《おかん》が全身を包んだ。もっともその悪寒は、まだ寝ているうちからおこっていた熱のせいでもある。ところが、今はふいに激しい発作《ほっさ》となって襲って来…

『プロハルチン氏』(『ドストエーフスキイ全集1 貧しき人々』P283―P311、1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

プロハルチン氏 フョードル・ドストエーフスキイ 米川正夫訳 - 【テキスト中に現れる記号について】《》:ルビ (例)朔日《ついたち》|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)毎月|朔日《ついたち》[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の…

『ポルズンコフ』(『ドストエーフスキイ全集1 貧しき人々』P403―P417、1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

ポルズンコフ フョードル・ドストエーフスキイ 米川正夫訳 - 【テキスト中に現れる記号について】《》:ルビ (例)糧《かて》[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定 (数字は、JIS X 0213の面区点番号またはUnicode、底本のページと行数) …

『人妻と寝台の下の夫』2(『ドストエーフスキイ全集2 スチェパンチコヴォ村とその住人』P289―P315、1970年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

[#6字下げ]2 その翌晩、イタリア劇場の出し物は何かのオペラであった。イヴァン・アンドレーイチは、まるで爆弾のように客席へ飛び込んだ。彼が音楽に対してこれほどのfurore 即ち情熱を示したことは、いまだかつてその例がないのであった。少なくとも…

『人妻と寝台の下の夫』1  (『ドストエーフスキイ全集2 スチェパンチコヴォ村とその住人』P273―P289、1970年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)

人妻と寝台の下の夫 フョードル・ドストエーフスキイ 米川正夫訳 - 【テキスト中に現れる記号について】《》:ルビ (例)彼女《あれ》|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号 (例)今夜|仮面舞踏会《マスカラード》[#]:入力者注 主に外字の説明…