京都アニメーション放火殺人事件(京都市伏見区放火殺人事件、2019年07月18日)の資料収集の会

(元・オウム真理教事件・資料収集および独立検証の会、できるかぎり同時進行)

上祐史浩・東京地裁判決(要旨・1997年3月20日・竹崎博允裁判長)

上祐史浩被告に対する判決要旨】
(量刑の理由の要旨)
 被告人らは、教団の虚偽の主張を維持するようにとの松本の指示のもとに、○○(熊本県波野村に教団が取得しようとした土地の売り主=筆者注)に対し、捜査機関への供述を翻すように迫り、○○の押印のある書面を用いて受領書を偽造し、その印影をもとに精巧に偽造した印章を用いて覚書を偽造し、かつ、多数の専門家に依頼して、右偽造の印影と真正の印影とが同一である旨の鑑定を行わせ、教団側の関係者全員に虚偽のストーリーを記憶させ、さらに、あらかじめ作成した想定問答に基づき偽証を行うなど、組織をあげ、あらゆる手段を尽くして真実を隠蔽し、捜査および公判の妨害を図ったものであって、刑事司法制度を歪める極めて悪質な犯行である。
 被告人は、右犯行当時、教団の最高幹部の地位にあり、受領書の偽造を提案し、本件土地取得に関与した教団関係者らに個別に面接して、全体としての虚偽のストーリーを組み立てるとともに、各人にこれに沿った個別の虚偽のストーリーを記憶させ、自ら覚書の偽造を行い、前記印影の鑑定を指示し、偽証に当たっては、事前に模擬の尋問を行うなど、一連の犯行の立案と実行行為の中心的役割を果たしたものであり、本件を特徴づける徹底した欺瞞性は、まさに被告人の関与の結果であると認められ、その刑責は重大である。被告人は、逮捕後、検察官に対し犯行の全容を詳細に供述していたが、公判廷においては、虚偽の主張を貫くよう指示した松本への信を繰り返し述べるなど、現実から逃避した態度を続けており、反省の様子はまったくうかがえない。
 本件各犯行は、被告人らが、教団の虚偽の主張を維持するようにとの松本の指示に無批判に従ったものと認められること、熊本地方裁判所における前記各被告事件の終局前に本件各犯行が発覚し、最終的に裁判所の判断を誤らせるには至らなかったこと、被告人が捜査段階においては犯行について詳細な供述を行い、真相の解明に協力していること、これまで前科前歴がないことなどを考慮し、主文のとおり量刑する。

 

底本:『オウム法廷4』(1999年、降幡賢一朝日新聞社