京都アニメーション放火殺人事件(京都市伏見区放火殺人事件、2019年07月18日)の資料収集の会

(元・オウム真理教事件・資料収集および独立検証の会、できるかぎり同時進行)

『罪と罰』第3編

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP265-P276

「あなたはぼくをおたずねになったんですね……庭番のところで?」とうとうラスコーリニコフは口をきったが、なぜかばかに小さい声だった。 町人はなんの返事もしなければ、ふり返ろうともしない。ふたりはまた黙りこんでしまった。 「あなたはいったいどうし…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP253-P264

でも、単に偉人のみならず、わずかでも凡俗の軌道を脱した人は、ちょっと何か目新しいことをいうだけの才能にすぎなくとも、本来の天性によってかならず犯罪人たらざるをえないのです――もちろん、程度に多少の相違はありますがね。これがぼくの結論なんです…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP241-P252

てた。 「諸君、いったいなんだって、いすをこわすんです、国庫の損害じゃありませんか!」(ゴーゴリ『検察官』中の有名なせりふ)と、ポルフィーリイ・ペトローヴィチは愉快そうに叫んだ。 その場の光景は、まずこういったぐあいであった――ラスコーリニコ…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP229-P240

目で彼女を引きとめながら、ラスコーリニコフはせきこんでいった。「どうぞお掛けください。きっとカチェリーナ・イヴァーノヴナのお使いでしょう。どうぞ、そこじゃない、こちらへお掛けください……」 ラスコーリニコフの三つしかないいすの一つに腰をかけ、…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP217-P228

まったことだろう――ただひょいと手を伸ばして、優しい目つきを見せただけだもの……それに、あの子の目の美しいこと、そして顔ぜんたいの美しいこと! ドゥーネチカよりもきりょうがいいくらいだ……でも、まあ、あの服はなんということだろう、なんてひどい身な…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP205-P216

「いったいだれに話したんだい? きみとぼくくらいなものじゃないか?」 「それからポルフィーリイにも」 「ポルフィーリイにもしゃべったっていいじゃないか!」 「ときに、きみは、あの人たち――おふくろと妹を左右する力を、いくらか持ってるだろうね? 今…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP193-P204

れは酒のせいじゃありません。これはあなたがたを見たとたんに、ぼくの頭へがんときたんです……だが、ぼくのことなんか、つばでも引っかけてください! 気にとめないでください。ぼくは口から出まかせをいってるんです。ぼくはあなたがたに価しない……ぼくはと…

『ドストエーフスキイ全集6 罪と罰』(1969年、米川正夫による翻訳、筑摩書房)のP181-P192

彼はからだじゅうおこりにでも襲われたような気持ちで、静かに階段をおりて行った。自分ではそれと意識しなかったけれど、張り切った力強い生命が波のように寄せて来て、その限りない偉大な新しい感覚が、彼の前進にみちあふれた。この感覚は、ひとたび死刑…